90歳の難聴のおばあさん

90歳のおばあさん。
内科の先生に難聴がひどいとのことで紹介していただいた。

難聴ったって90歳じゃあしょうがないなあと思いながら、耳の中を見る。
鼓膜が何となく濁って見える。
鼻の中を見る。
ポリープいっぱい。
鼻汁をズルズルと吸引する。
のどを見る。
鼻汁がのどへも下がっている。

どうも滲出性中耳炎らしかっった。
子供に多い疾患だが、老人でも時々ある。
このおばあさんのように鼻茸や副鼻腔炎(蓄膿症)があると罹りやすい。
鼓膜の奥にたまった水を抜いてやると、劇的に聴力が改善する人もある。
でも、このくらいの年齢だとおつむの働きがいまいちの方もあり、抜いてあげても、余り変わらないとおっしゃる患者さんも多い。

耳管通気(鼻から管を入れて鼓膜の奥の部屋へ空気を送ってやる治療)でもやろうと、していたら。
「暑い、暑い!苦しい!」と、おっしゃった。
何回も繰り返しておっしゃる。
いわゆる脳貧血らしかったので、ちょっと椅子を寝かせて、様子を見た。
ご本人は何もおっしゃってはいないし、顔もしかめる様なこともなかったのだが、耳あかを取ったり、鼻汁の吸引をしたのがとても痛かったのだろうか?

付き添いの子供らしいおじさんは、
「良くあることだから。」と、平然とされている。
少し待つと、気分が改善してきたようだった。
血圧も、120/70で問題無さそうだった。
おばあさんは、
「もう、うちへ帰る。うちへ帰らせて。」
また、繰り返しおっしゃる。
これ以上の処置は難しそうなので、子供さんに、
「どうしましょうか?何回も通院するのも無理ですよね。今日、処置をするとすれば、鼓膜に穴を開けて奥の水を抜いてやることですが、これも、ちょっと難しそうですよね。」
「しょうがないので、これで帰ります。」
と、治療はせずに帰るとのこと。

車いすに乗ってもらい出口へ。
息子さんは、車いすを押す手つきも慣れたものだ。
出口のところで、おばあさんは、
「こんなとこ、来るんじゃあなかったよー!早くうちへ帰りたいー!」
(「こんなとこ」だと!!)
息子さんが、
「いつもこうやって、ひっくり返ったり、変な事言うから参っちゃうよ。帰る途中で、あそこの火葬場へ捨ててってやるよ。」
と、事務員に笑いながら話し帰って行かれたようだ。

当院のまわりは、病院、火葬場、お墓と完備されている。
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by InTheEar1 | 2006-01-16 21:08 | 耳の病気


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