クチャクチャ

40歳の男性。
診察室へ入って来られる。
口がクチャクチャと動いている。
誰が見てもガムを噛んでいるのは明白だ。
今までもガムのネタはここへ何回か書いたが、どうどうと咬みながら入ってこられる患者さんは初めてだ。
いつもは、ちょっとした口の動きを見て、「まさかガム噛んでないよな?」という疑い程度で、のどを診察するとき、「やっぱりガム噛んでた」とウンザリするのだが、この方は、ガムを噛みながらの診察に何のためらいもない様子だ。

「どうしましたか?」
「耳がつまった感じがするんです。(クチャクチャ)」
「いつからですか?」
「3日くらい前からです。(クチャクチャ)」
「どちら側ですか?」
「右側ですけど、(クチャ)、左も少し変です。(クチャクチャ)」
「風邪の症状はありますか?鼻水とか咳とか。」
「鼻は、1週間程前から出ています。(クチャクチャ)咳は、少し出ます。(クチャ)」

私の診察意欲はゼロ。
「ガムなんか噛みながら診察に来るなんて」と、言えれば、どんなにすっとするだろうが、医療は、サービス業であり、患者様を怒らせるわけにはいかない。
そんなことを言ってしまえば、私は、また、傲慢な医者だと言われてしまう。

こんなことを思いながら、何も言うことも出来ずに、一応型どおり耳、鼻、のどを診る。
のどを診るとき、看護師が見かねて、ティッシュを患者さんに差し出した。
耳鼻科の診察では、看護師は患者の後側に立つので、患者の顔は見えないが、後ろにいても、ガムを噛んでいることがはっきりわかったようだ。
そういえば、子どもの診察をするときは、口の中にお菓子などが入っていないか確認し、入っていれば、出させてから診察せよと教科書に書いてあった。
口に入れたままだと、びっくりしたり、泣いたときに、気管支異物になる可能性があるからだ。

この大人の患者さんは、素直にガムを出してくれた。

「まだ、味が残っているから、もう少し噛ませてください。」
と、駄々を捏ねる人でなくて良かった。
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by InTheEar1 | 2007-04-04 20:54 | 診察室


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